ウィッチャー3 レビュー

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ネタバレを恐れることなく心おきなくレビューしたかった為、ストーリーレビューと分けました。

この記事はゲーム部分のレビューとなります。

ストーリーのネタバレはありませんが、ゲーム部分の(レベリングの話とかその程度)ネタバレを含みます。


ストーリーに関しては以下を参照してください。

【The Witcher3】クリア後レビュー 洋ゲー史上最高のストーリー!【未プレイの方向け】

【ウィッチャー3】クリア後ストーリーレビュー 話が非常に良い【ネタバレ注意】

 
私は現在100時間以上プレイしています。


難易度ノーマルで一度クリアし、今は最高難易度であるデスマーチで中盤までいったところ。


 



どんなゲームか


ロードオブザリング(指輪物語)のような中世ダークファンタジーの世界を、モンスタースレイヤーのウィッチャーという存在(職業と言うより人種とでも言った方がしっくりくる)の主人公が旅する物語。


だからといって「伝説のドラゴンを倒す」のが目的ではありません。

ウィッチャーの本分は怪物を倒すことではあるのですが、主人公の目的はあくまで「愛する人を見つけ出すこと」で、怪物退治は手段であり目的ではありません



箱庭型のオープンワールドゲームで、目的を達成する順番も手段も比較的自由。

サブクエストも豊富ではありますが、ゲームバランス的にはサブをやらずとも攻略できるようになっています。


しかしサブメイン問わず一つ一つのエピソードが非常に面白く、ずっとサブクエストをやり続けても飽きない。


それは話の面白さ以上に戦いの面白さに起因します。(後述)





日本人向きの洋ゲー


まず日本語で書いている以上ここを言っておかなければなりますまい。


witcherskyrim



洋ゲーと呼ばれるものは単に「海外製作のゲーム」という話ではなく、洋ゲーには洋ゲーの特徴があります。

RPGに限って言うと(ウィザードリィでもTESでも)、テーブルトークRPGを源流とし、ロールプレイが特に重要視される。
主人公はプレイヤーの分身であり、プレイヤーの願望を再現できればできるほどいいという雰囲気。


舞台が用意されて「はい、後はどうぞ楽しんで!」と放り出される。


プレイヤーは、「俺は剣でバッサバッサ切る卑劣漢!」「魔法で遠くから狙うクールな男!」と自分の思い描いた主人公をロールプレイする楽しみを求めており、ゲームもそれを目指す傾向にあります。



一方、日本で好まれるのは主人公の物語を追体験するもので、過去に評価を受けてきたゲームを見てもそれは明らか。

FF、DQ、テイルズ、ゼノシリーズetc...


ウィッチャーシリーズは洋ゲーでありながら正にそれなのです。


主人公ゲラルトの物語をプレイするゲームなので、とても日本人向き。


TESやGTAの流れを汲むオープンフィールドを備えているものの、JRPGライクな印象です。





世界観とピッタリ合ったゲームシステム


一番評価したいのは原作付きのゲーム化であること。

原作の設定を無理なく、かつ再現度は非常に高くゲームシステムに組み込んでいる。

crossbow





例えばウィッチャーは様々な秘薬(霊薬と呼ぶ)を用いて自身を強化して戦いに臨むのですが、霊薬は色々な材料を収集して作る。

材料を集めて錬金術で薬を作るなんて、とてもRPG的ですよね。


設定をゲームに活かすという意味で秀逸なデザインです。


そして戦闘。戦闘については次の項目で。




ウィッチャーの戦闘



ウィッチャーの戦い方が他のゲームの英雄たちと違うのは、準備に大きな意味があることです。


例えば多くのRPGでは強い武器を手に入れたらそれに頼っておけば楽に攻略できますが、ウィッチャーは違う。


まず敵を知ることから初めます。

探偵ゲームばりの情報集め、検死、現場検証を経て敵の正体を突き止め、次はその敵に対しての対策を練ります。

霊薬はこれを使って、爆弾はこれ、オイルはこれ、敵の特徴に合わせて「戦闘中はこの魔法が有効か」と戦略を練って臨む。


低難易度ではこの過程はそこまで必要ありませんが、準備をしておけば楽にはなります。

高難易度で強い敵に挑む時には、対峙する前に勝敗が決していると言ってもいいくらいです。

そのくらい敵に多様性があり、同じ戦い方を続けては勝てるものも勝てません。


例えば幽鬼という幽体の敵には、設置型の罠魔法「イャーデン」を使わなければなかなか勝てません。

事前に幽鬼が敵だとわかっていれば、幽鬼用のオイルを剣に塗り(敵の種類に応じたオイルがあり、攻撃力が上がる)、イャーデンの準備をして戦闘に入れます。



主人公の師匠が「準備を怠るな」とか言うのですが、これが本当にそうなのです。

で、死んだ時に「ああ、言うことを聞いておけばよかった・・・」なんて思うんですよね。


これがまた没入度を高めてくれます。俺はウィッチャーなんだと。





世界


中世ダークファンタジーの世界観を忠実に再現している点は評価しますが、村の数10m先に化物が居るのに村人が平然としていたりなど、この辺の作り込みは甘い。


そこを除くとマップは雄大で冒険していて楽しい。

目的地の道中に急にでっかい怪物が現れたりするのもワクワクします。一目散に逃げますが。


自然が雄大なのに加え、街の作り込みは狂気と言ってもいいくらいです。

初めてノヴィグラドに行く時なんかめちゃめちゃテンション上がりますよ。


本当に、中世の街一個が再現されている感じ。

ノーロードなのも良いです。



ただ一つだけ。

ダンジョンが少ない。

ここはスカイリムやオブリビオンと比べてしまった私が悪いのかもしれませんが、最深部まで1時間以上かかるような大きなダンジョンなんて1つか2つしかありません。

もっとたくさんあれば嬉しかったです。

ゲームの特性上相当な難易度にはなるでしょうけど。

戦闘に慣れてきたとはいえ、雑魚敵であるドラウナーでさえ数匹に囲まれると油断したら死にますからね。





全てを網羅しようだなんてゲーム的な思考は捨てよ


このゲームにこう言われたような気がして、ガツン!と頭をはたかれた気分でした。

そうですよ。そうなんですよね。


いかにゲームとはいえ、私は今この世界に存在しているのだから、死んだ奴は死体として扱わないと



何が言いたいかというと、実はこのゲームはゲーム的な快適さをあえて廃している部分があります。


具体的に言うと時限性結果の置換です。


ゲームでは基本的に時限性のものは何であれ嫌われる傾向にあります。

例えば、○○に行く前に△△しておかないと△△はもうできないというようなことです。


結果の置換とは、凄く簡単に言うと「誰々を助けられなかったからやり直そう」といった、非常にゲーム的な思考。



本作はこれをおそらく意識的に配置することで、ゲームとしてではなく世界としての重厚さを増すことに成功しています。


攻略サイトのチャートとゲーム画面をにらめっこして楽しいの?


ゲームを全て網羅したいという人には合わないかもしれません。

起こったことは起こったこととして、ショックだ・・・で終わらせられる人の方が楽しめるゲームだと個人的には思います。





選択肢によって起こる分岐


ゲラルトの物語だ!なんて言ってきましたが、ゲラルトにどういう行動をさせるのかはプレイヤーにかかっています。


本作はマルチストーリーを採用しており、ほぼ全てのクエストにいくつかの過程と帰結が見られます。


これがまた世界への没入を高めてくれる。
上で書いた通り。



とは言えこれは現実ではなくシステムで構築されたゲームですから、全ての事象が選んだ選択肢によって起こっているわけがない。


・・・と思うじゃん?


しかしながら、プレイヤーにはもうどれが元々あった結果でどれが自分の起こした行動による結果なのかわかりません。

私も二周目で「ええ、コイツ人狼(狼人間)だったのかよ!?」という驚きがありましたし、未だに「あの時死んでしまった人を助けることができたのではないか」という疑念をたくさん持っています。


考えてみればマルチストーリーのゲームならこうなるのは自然ではあるのかもしれませんけど、ウィッチャー3に関してはこの思いが強いんですね。

マルチな展開をする場所が非常に多いこと、選択によって起こる変化が些細なものではなく大きな変化であること、おそらくこの二点によって、何を見ても既定の事象とは思えない物語(この結果は自分が選択した結果なのか?それともゲーム上避けることのできない結果なのか?)という、極めて稀有なゲームプレイとなったのだと思います。





ゲームはおろか全てのフィクションの頂点



もうちょっとマルチストーリーのことを大きく話をすると、これは他の物語ではまず起こりえない現象です。

なぜなら映画や小説や漫画は必ず既定の事象しか起きないからです。当然です。


(現実を除くと)まずゲームでしか得られない体験だと断言できます。


そしてゲームの中でも非常に稀で、私は本作以外ではここまで実感したゲームはありません。

そういう意味でウィッチャー3は、現実でしかまず得られない体験(何を見ても既定の事象とは思えない)を唯一享受することができるフィクションであると言えます。


大きなことを言いましたが、少なくとも私は本作でしかこの感覚を味わったことがないので、本当にこの通りなのです。


ここだけに関してだけ言えば「全てのフィクションの頂点」だと言えます。

(頂点なんて言うと信者みたいに思われそうで嫌だな。「唯一無二の存在」くらいにしときます)





具体的な戦闘


先にも書いた準備に加えて戦闘自体も楽しいです。

ダメージソースを何とするかで戦闘スタイルが大きく変わる他、一番の基本となる剣主体に絞っても様々な戦術・スタイルを選べます。

私は基本的にステップ回避からの弱攻撃を主としていましたが、他には魔法で牽制して斬りつけたり、盾魔法で的の攻撃を流しつつ斬りつけたり、斬る動作にも強攻撃弱攻撃があったり、とスタイルによって様々。

戦闘スタイルはアビリティや装備や霊薬によって修飾でき、魔法主体なら魔法スキル上げ魔法力上げ装備と霊薬で火力を上げるなど、様々な組み合わせが可能。


特筆すべきは敵の特性に合った攻略法があることで、例えばグールは回避して攻撃戦法が有効だが、ウォーターハグは回避行動をするより斬りつけまくった方が有効であったり、準備と戦闘スタイルの両方で有効な敵に対処しなければならない点は面白い。


実際あったのが、何度やっても勝てなかった上位のグリフィン(鳥の化物みたいなの)に、ヤケになって斬りつけまくったらあっさり勝ってしまった。

引くより押せ押せの方が有効だったんですね。



 


ゲームプレイ


ここからは普通のゲームプレイの話をします。
不満など。


・倉庫がない
「そういうゲームだ」と言ってしまえばそこまでなのですが、私は割と装備を残す方なのでこれが辛い。
ゲラルトは放浪者なのだからこれでいいのかもしれませんけどね。
ゲームとして見るとマイナスポイントでしょう。
※アップデートにより倉庫が追加されました。


・UI
持ち物の量が増えてくると重い(動作がね)です。
あれだけのマップを描写できるのに、ここはスムーズじゃないんだ・・・なんて思ってしまいます。


・挙動
リアルな動きを再現したかったのだということはわかりますが、動かしにくいことに変わりはありません。スムーズとはとても言い難い。
戦闘中は良いのですが、普段の探索などではストレスがあります。
取りたい宝箱を通り過ぎてしまったり、なかなかよじのぼれなかったり。
小さいことですが量が多いとストレスになります。
ローチ(馬)君いつもがんばってはくれるんですけど、いかんせん操作性が悪い。
あり得ない挙動をしないように設定がんばったんでしょうけど、少々変な動きでもいいのでスムーズにしてくれると嬉しいんですけどね。
※アップデートにより慣性が抑えられた移動モードが追加されました。


・バグ
洋ゲーにしては少ない方ですが、あることにはあります。
しかし修正が早く頻繁なので、むしろそっちを評価したい。
ついでに無料DLCが豊富なことも。




ローカライズ


スパイクチュンソフト・・・いえ、神様スパチュン様!

素晴らしいローカライズをありがとう!


ここまで最高のローカライズはないですよ。

本当に「いいゲームにしよう」という思いが非常に伝わってきます。


人気作に出張ってきてはカスみたいな翻訳を付ける会社。
名前なんだっけ?クソ四角とかなんとか。見習え。そして悔いろ。


全ての台詞をフルボイス化しています。

歩いている時に街の人がつぶやく言葉まで。

「息子にゲラルトと名づけるよ!」から、「ウィッチャーは子供を攫って食べるって本当?」まで。


それに、文書などを見るとよくわかるのですが、非常に自然な文章。

文体まで再現している辺り、熱意のほどが伺えます。


劇中歌まで歌詞を日本語訳する徹底っぷり!

単なるにぎやかしの歌だったら「そこまでせんでも」なんて思ってしまいそうですが、この歌は歌詞の意味がわかって初めて物語に花を添える役割を持つので、日本語の歌にしてくれて嬉しかったです。

prisira



願わくば私のこの「良い仕事をありがとう」という思いがスパイクチュンソフトにまで届きますように。

これからもお願いします!







まとめ


ストーリー○
ゲーム○
ストーリーとゲームのバランス○
ボリューム○


おまけにローカライズも○


文句無し!


そりゃ挙動やらバグやら不満はありますが、それらが霞んで見えなくなるほど他が素晴らしいので問題ない。



ポーランドのCD Project REDという、決して大きくはないゲーム会社がこれほどのゲームを作ることができるなんて、開発費の高騰なんか言い訳にできんぞ。

開発費はそれなりにかかっているでしょうが(株主向けIRから広告費込みで5000万ドルほどとの話も。噂程度ですが)、本作の面白さはグラフィック依存ではない。

これがもっとグラが悪くたって、ゲームの面白さを阻害するものではありません。



開発費どうこうよりも、「面白いゲーム作ってやるぜ!」という気概が感じられる。

そしてそれを「面白さをそのまま伝えてやるぜ!」という気概でローカライズしてくれる会社が日本にはある。

こんな幸せなことってあるか。


ソシャゲでB層から小銭巻き上げるのに忙しいんでしょうけど、なんとか日本のゲーム会社にもがんばってほしいものです。


しかし、CDPRという稀有なスタジオが出てきたことは我々にとって嬉しいニュース以外の何者でもない。
(ウィッチャー過去作のことは当然あるにしても)

サイバーパンク2077にも期待できそうです。


評価は★★★★★

満点をあげたいところだけど、後はバグさえ直れば・・・といったところ。

★4.5ですね。

ゲーム外の部分(「ストーリーを主軸にしたRPGでここまでのレベル!JRPGもがんばれ!」という気持ちにさせてくれたところとか)も加味すれば思い入れも込めて満点でいいくらい。