METAL GEAR SOLID V: The Phantom Pain(以下TPP)を考えるシリーズ。

今回はフルトン編です。


MGSPWから登場したフルトン回収。


003



フルトン回収システムによってメタルギアシリーズが得たものと失ったものについて。

 

「フルトン回収システム」とは



フルトンとは風船状の装備です。

敵兵などに括りつけて上空へ飛ばし、それを航空機でキャッチ。
戦場から自拠点まで色々な物を送る鹵獲システムのことです。

これによって敵兵を仲間にするシステムが確立され、マザーベース(自拠点)の創造・発展に繋がります。(どちらが先にあったのか順番は不明。普通に考えればマザーベース要素の為のフルトンシステムでしょう)

気絶・睡眠・ホールドアップなどで無力化した兵士にフルトンを使うことで、その場からマザーベースに送ることができます。



風船で上空に飛ばす様は現実味がありませんが、実は「フルトンシステム(スカイフックとも)」は現実世界にも存在します。



元々は郵便物を効率的に空輸する為にできたもので、現実の軍では敵ではなく味方に使います。

風船で人を飛ばすのではなく、風船は人に装着したワイヤーを上空に飛ばす為のもの。

ワイヤーを航空機で引っ掛けて吊るし、その後飛行機へ収納します。

PWでの登場前にもMGS3でゼロ少佐がフルトンについて言及しています。





フルトンによってもたらされたもの





一番はストーリーと直結した収集(シミュレーション)要素を得たことでしょう。



以前にもドッグタグやケロタンなどの収集要素はありましたが、これらはメインストーリーとは関係の無いあくまでお遊び要素に過ぎず、集めたからといってストーリーに関わることはありません。

しかしフルトンとマザーベースはメインストーリーにも深く関わります。



というのも、ビッグボスを語る上で忘れてはならないのは彼の結末はシリーズ当初よりプレイヤーには周知の事実であることです。


「メタルギア」「メタルギア2ソリッドスネーク」を正史とするかは議論が起こるところでしょうが、少なくとも結果的にビッグボスが武装蜂起するのは確実なようです。



PWやTPPで描かれるビッグボスの帰結として、彼は自分の軍を持たなければなりません


その為のマザーベースであり、兵士集めであり、フルトン回収なのです。




ゲーム部分の話をすれば、フルトン回収によって可能となったマザーベース要素(順番は不明)はメタルギアの新しい楽しみ方を創造することになりました。

(兵を)収集して(基地を)育てるという、とてもゲーム的な要素です。


そして今回のTPPで語られる「復讐」というワードとも関わる部分で、自分で集めたからこそ愛着もあるし無くなった時の喪失感、怒りも増幅する。



このゲーム的な要素を得たことでゲームプレイもガラッと変わっております。

これまでは潜入したら大ミッションを達成するまでずっと潜入先で過ごしていた(常に戦場に居た)のが、TPPでは頻繁にマザーベース及び空中司令室があることで戦場と非戦闘地域を行き来する形となり、独立したそれぞれのミッションを選択し受注するミッション形式となりました。


これによってTPPは自分の基地を作るという新しい楽しみ方を作り出し、従来のメタルギアよりも長時間楽しるゲームとなっているはずです。





フルトンによって失われたもの



失われたものの筆頭は従来のメタルギアらしさでしょう。


フルトン回収があるおかげで従来のメタルギアから大なり小なり変わってしまいました。



まずアクションゲームとしてはフルトンがあることで失われたお約束があります。

それは兵の後処理です。


過去作をプレイした方なら誰しもがわかってくれるはず。

眠らせた(殺した)敵兵をロッカーに隠す

などの後処理。


死体を置きっぱなしにするのはスニーキングミッションでは許されません。

他の兵に見られたら警戒レベルが上がります。

フルトンの登場によって、(もちろん全てではないだろうが)兵の後処理は不要となりました。

フルトンで飛ばせば跡形も無く消えるので、隠す必要はありません。





次に、単独潜入・現地調達という従来のスニーキングミッションの大前提も失われました。
(フルトンというよりはマザーベースのせいですが)


「単独での隠密行動・装備は現地調達」これはメタルギアシリーズにおけるスニーキングミッションの伝統。FOX、FOXHOUNDの伝統でもあり、メタルギアの醍醐味でもあると思います。

マザーベースがあることで装備は現地調達ではなく開発で得られることになり、潜入も単独ではなくマザーベースの支援を受けられます。


単独潜入・現地調達ではなくなってしまった時点で、もうそれは従来のメタルギアではないと言っていいでしょう。





変化には痛みを伴う



総合すると、フルトンによって得た新しいゲーム性、そしてそれによって失われたメタルギアらしさという二面性があるという見解です。



私見を言うと、「ずっとプレイしてきたゲームのらしさが無くなるのは悲しい面もあるが、それ以上に歓迎したいゲーム性がTPPにはある」と考えています。



メインストーリーよりも何よりも私が一番ポジティブな注目をしているのはマザーベース要素ですし、失ったもの以上の楽しみが詰まっているはずだという期待を持っています。

まだ発売前なのでなんとも言えませんが・・・



痛みを恐れて変化を止めるなど愚か者のすることだ



とメタルギアっぽい台詞で締めたいと思います。

締まった・・・のか?