2004年発売

メタルギアソリッドシリーズでは3作目、メタルギアとしては5作目。


METAL GEAR SOLID 3: SNAKE EATER

mgs3

MGSシリーズレビュー週間の第三弾。


個人的にはMGS最高傑作はこの3だと思っています。


重大なネタバレが含まれるので未プレイの方はご注意ください。



MGS3概要



シリーズとしては異色のタイトルです。

これまでずっと追ってきたソリッドスネークの話ではなく、ソリッドの敵だったビッグボスを主人公に据え、時系列を逆行した初めてのタイトルでもあります。

MGS2までは時系列順に進んでいたストーリーが一転、初代メタルギア(80年代後半)よりも前の話になっています。(MGS3は64年)


シリーズが長い作品ではよくある「0」的な立ち居地です。
(発売された当初はという話。後にPO、PW、Vがありますからね)


日本では前作と変わらない売上を記録した本作ですが、北米で伸び悩んだ為セールスは400万本弱と前作よりもかなり落ち込んでしまいました。
(MGS1、MGS2は600万本超え。参考:VGchartz)



 



The BOSSという人物



MGS3を名作たらしめているのはまずストーリーが良いからです。

ゲーム的にも優れた作品ではある(後述)のですが、何よりもこの秀逸な物語は評価されて然るべきでしょう。



ネイキッドスネークと愛国者(後に絡んでくる為、シリーズの0として絶対に必要)

オセロットとの関係

ビッグボスとは如何なる人物だったのか

より現実的な世界情勢を組み込んだ舞台設定



などなど、これらにも優れた物語性があるのですが、結局のところThe BOSSの添え物でしかありません。


下手をすると主人公であるネイキッドスネークまでも、The BOSSの生涯を彩る存在と言ってしまってもいいくらい。


chara_boss_pic




そのくらいThe BOSSという人物のカリスマ性が際立っています。


物語を書く上でやってはいけないタブーというものがありまして、それは到底表現できなそうなことを描くこと。

例えば「見れば万人が涙を流す絵」を漫画で書いてはいけないわけです。
「誰もが感動する歌声」を映画で表現してはいけないわけです。

説得力がなくなってしまいます。



その点このThe BOSSという人物は凄い。

作中では戦闘の技術以上にそのカリスマ性で人々を魅了し、後にThe BOSSを信奉した人物同士が彼女の意志を別の形で体言しようとした結果、核戦争になりかけたくらいです。

そのくらいのカリスマ性を持つ人物を描けるか。

普通なら無理です。描こうとすることさえ躊躇すべきと言ってもいい。



にも関わらず、それをやってのけたのが本作なのです。


確かにこの人だったら命預けるわな。

と思えるキャラクターが過去にどれだけ居たでしょうか。



The BOSSはその生き方でスネークに、ゼロ少佐に、EVAに、そしてプレイヤーに自身の在り方を示し、プレイヤーはスネークと同様の思いを描くことができます。

ここだけで傑作の印を押すべき作品だと言えます。




他にも、オープニングや色気のあるシーンなどに見られる映画らしさ、後のシリーズで明かされる秘密、オセロットのフィーチャーに代表されるようなプレイヤーが望むものへの配慮など、色々といいところはあります。

しかしThe BOSSの話に終始せざるをえない。





追加要素が豊富なゲームプレイ



The BOSSについてはもう少し言いたいのですが、それにはゲームプレイについての言及が必要なので先にこちらを。


MGSからMGS2へ進化した時よりもMGS2からMGS3への進化の方が大きく感じます。

ハードが一世代進化したMGS2よりも大きな変化です。


ゲームとして非常に面白い作りになっています。


その一番の要因はサバイバル要素の追加でしょう。


カモフラージュ率と食料の確保(キャプチャー)システムによってゲーム性に向上が見られます。

服やフェイスペイントを選ぶ楽しさと、食事をするという面白さが追加され、これによってスネークがより生き生きとして見えます。



そして、ステージもジャングルから峻岳、基地、研究施設に至るまで多彩な場面を有し、それによってカモフラージュも必要になる。


テーマは重いがユーモラスな展開が多く、無線は当然のことながら(「で、食えるのか?」)ボス戦でさえユーモア全開。おそらく意識的にエンターテインメント性を高めているのだと思います。



これまで全てのシリーズで言ってきた「ムービー多すぎ問題」ですが、MGS3ではムービーの量は多いもののその分ゲームプレイの時間が長い(体感)のであまり気にならなかった気がします。






メインストーリーの表現法



The BOSSについてに戻ります。


彼女の本意についてはラストバトルでさえ明かされず、真実が明かされるのはエンディングです。

この作りが非常に小憎らしい。



ゲームが楽しいのでプレイヤーはズンズン前へ進みます。

それが嫌な結果を招くだろうとは思いつつ。The BOSSの抹殺はスネークイーター作戦の大目標の一つで、「戦いたくないよなぁ」なんて思いつつもそれほど深くは考えられないような作りになっています。

The BOSSと戦うよりも前にやることがいくつもありますし、ゲームは楽しい。


途中までその目的を忘れてプレイしてしまった方もいるのでは?



そして最後の戦い

ゲーム史上に残るほど戦いたくない敵かもしれませんね。

ここまででスネークに同調していればしているほど引き金が重かったはず。



とはいえまだここはクライマックスにあらず。

戦いたくないことは戦いたくない。ただしそれは真実を知らないからこそその程度で済んでいるのです。



本当のクライマックスはエンディングです。

ご丁寧にオセロットまで用意してこちらを楽しませてくれます。


The BOSSとの嫌な戦いを薄れさせてくれるかのように。



ラブシーンが終わり、さて・・・これで終わりか・・・


なんて思っているところに最大の爆弾が落とされます。



「彼女こそが真の愛国者」





このデブリーフィングを聞いて震えたのは私だけではないはず。


あの時「なんで裏切ったんだよ。ったく・・・」と簡単に引き金を引いていればその分だけ圧し掛かる後悔。



俺はなんてことをしてしまったんだぁぁぁ!!



とのたうち回ったあなたこそ、このゲームを真に楽しめたと言えるでしょう。




推察でしかありませんが、このエンディングを際立たせる為だけに派手な戦闘やユーモア溢れるゲーム性にしたのではないかと思うほどです。

事実、私はこのゲームをゲームらしく遊んでいたが為に、エンディングでガタガタ震えてしまったのです。



The BOSSの精神に心を強く打たれると共に、自分のしてしまったことへの後悔が押し寄せます。


ここまで心を揺り動かされるなんてなかなかないことです。




そして、私以上に衝撃を受けたであろうスネークは何も語りません。

bigboss


自分が、俺は、とプレイヤーのことばかりを言ってきたのはこの為。

言葉を用いずとも雄弁に語るスネークの姿を見てプレイヤーは彼の心境を察するわけですが、そのおかげで物語を見るのではなく体験することができるのです。

同調が強ければ強いほどにこのシーンが胸に響く。

ゲームであればこそ、同調も深いのです。





総評



The BOSSの話に終始してしまいましたが、MGS3とは何かと問われればこれしかありません。


ネイキッドスネークがThe BOSSから得たもの


もうこれだけと言ってもいいです。

そのくらい強烈で他が見えなくなるほどに強い。



稀有で素晴らしい物語と楽しいゲーム性の二つを兼ね備えた最高のMGS、それこそが本作MGS3であると断言します。