以下、激しくネタバレ注意!




MGSV TPP内のある一つのシーンだけを取り上げたレビュー・感想です。










PVにもあったこのシーンまで進んだ方だけ読んでください。


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「いや、俺ネタバレとかどうでもいいし」


なんて言わないで。こんなところで知るなんて非常にもったいない。絶対ゲーム中で出会った方がいいです。








 






概要



おそらくもうお気づきだと思いますが、私が言っているシーンとは、第二次寄生虫パンデミックの隔離プラットフォームでのシーンです。



ある時カズから無線が入り、隔離プラットフォームにてまた感染が起きたとのこと。

事態を調べに入った警護班との連絡も途絶えた。

スネークは「俺一人でいい」と事態の収束の為一人で中へ。

中にはたくさんのスタッフが血みどろで倒れていた。



声帯虫によって多数の命が失われた第一次パンデミック。

マザーベースの総力を挙げて解決に尽力し、コードトーカーの回収と彼がもたらしたボルバキアによる治療によって感染は収束しました。

しかしヒューイが導入した検査機から出ていた放射線によってボルバキアが変異。

単為生殖が可能となったボルバキアは爆発的に増え、以前の声帯虫よりも急速に発症・拡大するという事態に。



一度感染すると対処の方法はなく、隔離プラットフォームに居たスタッフは皆感染していた。

彼らは外に出ようとする。寄生虫が自らを鳥に食わせる為に宿主を操るのだ。


何人かが突破して外へ出るとヘリからのナパーム弾が飛ぶ。このままではいずれ感染したスタッフは外へ出てしまう。ナパームで焼かれるくらいなら・・・皆が信奉したボスのこの手で・・・


ビッグボスは自らの手で感染者を楽にすることを選ぶ。




一人だけ感染していない者を見つけて、彼だけが一筋の救いとなります。


しかしすぐにそれは覆される。

発症していなかっただけで感染していたのです。


外へ出る扉の前でボスへそのことを伝える兵士。

「やっぱり駄目みたいです」と。

この地獄では一筋の救いさえ許されないのか・・・

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この人物を貴方は撃てますか?





ゲームでしか表現しえない悲痛



プレイヤーのその手で歩いて感染者を探し、その手で銃を構え、引き金を引く。

コントローラーを通してビッグボスを操り彼らを殺さなければなりません。


自らの手で回収して共に戦ってきたスタッフを自らの手で撃たなければならないのです。



この演出はThe BOSSの時にもありました。

しかし、今回はカットシーンではなく、全てを自分で操らなければいけない分、あの時よりも酷い。




「殺さないで、殺さないで」

「殺してください、ボス」

「どうせ死ぬなら、ボスの手で」




などと語りかけてくるスタッフを一人ずつ殺していく。

「俺にはできない」と電源を落としてしまった人が居たとしてもおかしくないと思います。



カットシーンで涙を流すことはあっても、泣きながらゲームを操作したことなんて初めてかもしれない。






極大の悲痛



主人公に共感するなんて生易しいものではありません。


自らの手で殺して回るのです。

撃っているのは主人公ではありません。私、私自身なのです。


例えば映画なら、ドラマなら、小説なら、どんなに同調していたとしても、それは物語を見ているという感覚で、よくできたものっだとしても主人公の悲痛がひしひしと伝わってくるくらいのもの。





このシーンでは悲痛が伝わるのではない。

何度も言いますが、悲痛を感じているのは私自身です。




ゲームでしか到底得られようもない感覚でしょう。



感染したスタッフのことを考えると「せめて自分の手で楽に」と思わざるを得ない。


しかし、自分で操っているからこそ引き金が重い



撃ちたくない



創作物でここまで感情を揺さぶられるなんて、私にとってはなかなかないことです。






評価はともかく歴史には残る



このシーンに対する評価は賛否があると思います。


やりたくないことをやらされるので、エンターテインメントとして評価できないとする方が居ても仕方ないと思う。


ただしそれはホラー映画に対して「恐過ぎるから評価しない」と言っているのと同じこと。

プレイヤーへ悲痛を感じさせる演出なのだから、その悲痛が大きすぎるという理由は褒め言葉に他なりません。




このシーンは間違いなくゲーム史上最も悲痛を感じさせた表現です。


皆さんの評価はわかりませんので「少なくとも私は」という注釈を入れさせていただきますが。





これをやらせた者への思い



複雑な思いです。

稀有な体験を賞賛したい気持ちもあるし、心的外傷(大げさに言うと)を与えられたことへの怒りもあるのかもしれません。



他に似た例はないかと思って考えてみると、一番最初に思いついたのは映画「ミスト」です。

ネタバレになるので多くは語りませんが、私がこの映画を見終わった時、最初に湧き上がった感情は怒りでした。

徐々にその怒りは製作者への畏敬へ変化していったのですが、今回の感情はそれに近いのかなと思います。




この悲痛あってこそ後の展開が生きるのでしょうし、本作のテーマである報復心に掛かってもくるでしょう。

事実、この直後に仲間達を弔うシーンがあるのですが、そこでのスネークを並々ならぬ思いで見守りました。

プラットフォームの演出があってこそ輝くシーンです。




ただし、私にはこれを手放しで賞賛する気にはなれません。

少なくとも現時点では。





あとがき



実はプレイ日記第4回にて少しだけこのシーンのことについて書いたのですが、どうにも書き足りなかったので独立させました。


私はまだクリアしていないので他の感想やレビューを読むことはしていませんが、ここだけは皆さんがどう感じたのか、どのように評価しているのか凄く気になります。

おそらく私と変わりないか、それ以上の思いを持つ方が多いのではないでしょうか。


本作には救いとなるネタ会話などもほとんどありませんので、尚更感じ入ってしまいますね。

スネークの軽口が聞きたいです。凄く。